PRODUCTION NOTE 今回の映画についての想い

赤塚さんに「FROGMAN、こんなの全然普通じゃないか」と言われる緊張はいつもある

僕自身、2006年からずっと『鷹の爪』をやり続けてきて、ひとつ自分なりのギャグの形を作れたと感じていたのですが、考えてみると僕が初めて「ギャグ」というものを意識した作品が『天才バカボン』でした。

僕が生まれて初めて描いたマンガの絵は「バカボンのパパ」でした。当時まだ5歳くらいでしたが、兄貴たちの影響で一緒にアニメ版『天才バカボン』を観ていたんです。だから、意識して観ていたというよりは「当たり前のようにそこにあった」という感じですね。今になって思うと、子供には分からないシュールなネタや高度なギャグもあったりしたんですが、それを自然なものとして受け入れていました。

最近、ネットでもバカなことをして注目を集める動画や記事もありますが、どれも「子供じみたバカ」なんですよね。大人が中学生みたいな真似をしているに過ぎない。でも赤塚さんが実践してきたバカは、クールでウィットに富んでいたのです。だから、シナリオを書くときも、絵を描くときも、赤塚さんに見せても恥ずかしくない作品にしなきゃいけないという想いは常に抱いています。赤塚さんに「おいおいFROGMAN、こんなの全然普通じゃないか」って言われるのでは、という恐怖はいつもつきまとっていますね。

FROGMANが「バカボンの世界」を描くのではなく、「FROGMANの世界」にバカボンたちを呼んだ

赤塚さんの『天才バカボン』は、「バカがマンガを描いたらどうなるだろう?」という問いにチャレンジした作品だと思っています。絵を左手で描いたり、吹き出しだけのコマを描いたりと、「マンガ」の枠組みをすっ飛ばしたアバンギャルドな試みを続けていました。でも完全に「バカ」になってしまうと作品が成立しなくなるので、そこの限界点をずっと突き詰めていた人だったと思います。

それと同じことをFROGMANがやる意味はないですし、僕にできるとも到底思えません。だから今回映画を作るにあたって、『天才バカボン』の世界観は思い切って捨てたんです。どういうことかと言うと「FROGMANの世界にバカボンたちがやってきて騒動を起こす」っていう形を採用しました。

困ったのが、バカボン世界の住人には「目的」がないこと。普通僕らがキャラクターを作るときには、まず「目的」を考えるんです。鷹の爪団なら「世界征服」、ポケモンだったら「ポケモンマスターになる」という目的が必ずありますよね。でもパパたちは、ただただ「バカ」なんです。動かすのにこんなに苦労するキャラクターはいませんよ。何度もシナリオを1から書き直して、今の第5稿でようやく「これでいける!」という手応えを感じました。だからこの脚本を書き上げることができたのは、僕にとっても大きな収穫です。「よく頑張ったな、おれ」と自分でも思いますよ(笑)。

バカになって矛盾を肯定する。「これでいいのだ」という言葉に込めた2人の想い

子供時代って、世界はとっても単純なものでした。「悪は正義に滅ぼされる」「良いことをすればほめられる」「努力をすれば報われる」という価値観を当たり前のように教えられ、それを疑いもしませんでした。

でも成長するにつれ、急に周りの大人たちが「人の言うことを簡単に信じちゃいけない」とか「人が嫌がることをやってでものし上がらなくちゃいかない」とか、それまでとは逆のことを言い出すんですよ。世の中は思っていた以上に完璧じゃない、そういう矛盾に悩むようになるんです。そして、その矛盾を憎むあまりに、過激派みたいになっちゃう人とか、犯罪に走っちゃう人とかもいます。

そういう世界の矛盾や不条理を、バカボンのパパのように「これでいいのだ」と肯定する作業は、この時代を生きる人にとってある意味必要なのではないかと。しかしそれは諦めの上で肯定ではなく、悪いジョークと笑い飛ばしながら受け止める、寛容さだと思ってます。

この映画は、今まで世界中で作られてきたあらゆるコラボ作品の中で最も馬鹿げた、みなさんの想像を超えた作品になっています。そして、家族みんなで笑えるとても良い作品になったと思います。ぜひぜひ劇場で「フランダースの犬」と「天才バカボン」の対決をご覧ください。そして最後に、全世界のお父さんに「家族を全身全霊で愛しましょう」と伝えたいです。…こう言っておけば、なんだか良い映画っぽく聞こえるんじゃないですか(笑)。

関係者の証言 その1 日本アニメーション スタッフ談

『天才バカボン』と『フランダースの犬』の共演についてお話を頂いた時は、正直イメージができなかったです(笑)。しかし、FROGMANさんの熱意に打たれて、夢の共演に賛同させていただきました。FROGMAN監督が作り出す新感覚のネロとパトラッシュが楽しみです。

日本アニメーション株式会社

1975年に設立し、今年40周年を迎える。全26作品からなる「世界名作劇場」シリーズや『ちびまる子ちゃん』など幅広い年代が楽しめる名作アニメを数多く製作。『フランダースの犬』は1975年の作品。

関係者の証言 その2 ぴえろ スタッフ談

FROGMAN監督は「バカボン」のことが大好きで、打ち合わせ中によく資料の余白にパパの絵を描いていました。監督には、「映画でしかできない笑い」を見せて、映画館が“笑い”で一体化するような伝説を残すことを期待します!

株式会社ぴえろ

1979年の設立以来、テレビアニメーションを中心に、アクション、SF、コメディ、教育作品などさまざまなジャンルの作品を制作。1990年に『平成天才バカボン』、1999年に『レレレの天才バカボン』の制作を担当した。

関係者の証言 その3 フジオプロ スタッフ談

『天才バカボン』は、赤塚不二夫作品の中で一番有名で一番身近な作品だったと思います。赤塚が描くサイン色紙はいつもパパの逆立ちポーズでしたし、彼自身のキャラクターはパパに最も近いのではないでしょうか。

FROGMAN作品として気兼ねなく存分に力を発揮していただきたいです。赤塚なら、「フロッグマン…誰?売れてんの?あのね、うちにはね、“べし”っていうカエルのキャラがいるの」などと言いそうですが(笑)。

株式会社フジオ・プロダクション

1969年に、赤塚不二夫さんが仲間とともに立ち上げたマンガ制作プロダクション。現在は長女の赤塚りえ子さんが社長を務め、赤塚不二夫作品に関する著作権管理・運営などを行っている。